定冠詞”the”の重要性を、アジャイルマニフェストから学ぶ。

ギルドワークス 前川です。

自信を持って言えるほどではありませんが、英語はちょっとは読み書きできます。そもそも英語の強さは、二種類あると思います。

一つは、語彙力。じつはこれ、僕はあんまりありません。なので結構英辞郎やロングマンの英英辞典を引っ張ってくることは多いです。

もう一つが、文法力。というか、英語のルールを知っておくこと、ですね。こっちのほうが僕は少し得意です。

文法と聞くと、あんまりいい顔する人はいないでしょうが、本来英文法ってのは英語の考え方を知るためのツールなんです。なので、幾つか知っておくだけで格段に英語の見方が変わりますよ。

そんなわけで、恐らく最も簡単な英単語の一つ、にして、多くの人が重要性を意識せず使っている”the”についてお話します。

定冠詞 “the”

“the”は文法上の分類で「定冠詞」と呼ばれます。「定冠詞」があれば「不定冠詞」はあるのか?というと、あります。”a”です。どちらも英語を勉強してごくごく初期にでてくるものですね。

この2つの違いは何でしょうか?実はもう名前の時点で答えが出てるんですが、定まったもの=文脈上一意に特定できる/するものを定冠詞で表します。バカみたいな例で恐縮ですが。

This is a pen.

は単独で意味が通りますが、

This is the pen.

は文単独では意味不明です。“the pen”ってどれなの!?となります。なので、例えば。

I found a pen yesterday. This is the pen.

みたいに文脈を付けないと意味がわかりません。

このように、”the”にはそれが指すものが一意に特定できている、という暗黙的な意味があるのです。逆に”the”を付けなかったり、”a”を使う場合には、これはふわっとした一般論を指しているという意味合いがつきます。

アジャイルマニフェストと原則における”the”の扱い

では、具体例としてアジャイルマニフェストアジャイル原則の原文を見てみましょう。

まずは、あまりにも有名なマニフェストの4つのセンテンスを引用します。

  • Individuals and interactions over processes and tools
  • Working software over comprehensive documentation
  • Customer collaboration over contract negotiation
  • Responding to change over following a plan

いかがでしょうか?そうです。Theは欠片もでてきません。マニフェスト中でTheがでてくるのは

That is, while there is value in the items on the right, we value the items on the left more.

このように、上に書かれている4センテンスで既に挙げられているものの、左のほうなのか右のほうなのか、を指定している部分だけなのです。

では、アジャイルの12の原則ではどうでしょうか?一つ目からいきなり、こうです。

Our highest priority is to satisfy the customer through early and continuous delivery of valuable software.

the customer“なんです。特定できて、目の前にいる、そのお客さんなんです。

公式日本語訳は、こうなっています。

顧客満足を最優先し、価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供します。

もちろん意味は正しいし、日本語としても綺麗です。でも、この訳だと原文は”a customer”や”customers”でもいいんです。

「顧客満足を再優先する」だけでは、あまりにも元の英文が持つ鋭い意味合いから乖離してしまっている。

だって現場には目の前に製品を届けるお客さんがいるはずなんですから。「現場のお客様を」とか「目の前のお客様を」とかの方が良い表現に思えます(語調は汚くなりますが)。

他の原則はどうでしょうか?例えば、三番目のセンテンス。

Business people and developers must work together daily throughout the project.

“the customer”だけでなく、”the project“です。プロジェクトも、メンバーがちゃんと全員”the project”と言える状態に、メンバー全員が自分ごととして認識して「そのプロジェクト」で通じる状態になっている、という前提なんです。

このように、アジャイルマニフェストとアジャイル原則は、定冠詞という観点から見ると大きく印象が異なるものです。言ってしまえば、アジャイルマニフェストは一般論としてのふわっとした言葉です。

対して定冠詞が非常に多く登場し、対象が明確化されるアジャイル原則は、より開発現場に近いところで利用する実践的な言葉、といえます。

このような視点で、一度アジャイルの原典であるこの2つの文章、英語で味わってみるのはいかがでしょうか。

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